交通事故レポート・1・続きの続き





 もよりの病院で休診の札を見て、私たちは、その日が土曜日であることを思い出した。
 その場で当番病院を聞き、札幌の西の端近くに向かって進路をとった。
 車内で、運転者はわびた。
「さっきは思わずおばさんなんて言っちゃってすみません。」
「ああ、気にしないでください。ほんとにおばさんですから。」(※17歳のとき知らないおばあさんに「おばさん」と呼び止められて以来、おばさんと呼ばれることに対する免疫ができているのである。)
「いえ、よく見たら若かったです。」
「私、30歳ですよ。」
「いや、ぼく、36歳なんです。ほんと、失礼しました。」
なんだとー?!無礼者!!

 そうこうしているうちに、左足がどんどん痛くなってきた。
ジーンズのすそをめくると、左のむこうずねが青紫に変色している。運転者は尋ねた。
「痛くないですか?」
「なんか、だんだん痛くなってきました。」
「最初、びっくりして痛いの気づかなかったんだとおもいますよ。」
 うんうん、高校のときに習いましたよ。アドレナリンと交感神経ですね。
 って、痛ぇよ、それどころじゃなく。なに落ち着いて生物の復習してるんだ俺。

 病院について車から出たときには完全に足をひきずっていたが、歩けるんだから折れてない、と自分に言い聞かせていた。 結果的に確かに折れてはいなかったが、実際にはアドレナリンのパワーは骨折も忘れさせるものらしいということを後で聞いた。
 いや、ほんと折れてなくてよかった。*印牛乳(伏字になってないぞ…)を毎日1リットル近く飲み続けた効果だろう。

 当番病院は、混んでいた。待合室で順番を待っている間に救急車が来た。 首をギプスで固定されたおばさんがストレッチャーに載せられてかつぎこまれるのを眺めながら、交通事故っておそろしいですね、とか、ぼんやり考えていた。
 って、痛ぇよ、それどころじゃなく。なに感心して他人の交通事故の傍観者になってんだ俺。

 待ち時間の間に、自宅とバイト先へ電話した。
 バイト先にはすぐ連絡がついたが、自宅にはつながらなかった。
 少し時間をおいてから、もう一度自宅に電話した。すると、自宅へはバイト先から電話がいっていて、大騒ぎになっていた。 本人以外からの連絡だったので、自力で連絡できないような大怪我だと思われたらしい。 頼むよバイト先……。いや、心配してくれるのはありがたいんだけど……。

 それでもって、来てしまったのである。両親そろって。
 第一報が本人だったら、そんな手間とらせずにすんだと思うんだよなぁ。ふつうに待合室で順番待たされる程度のケガなんだから……。 ほんとタイミング悪かった。いや、心配してくれるのはありがたいんだけど……。

 ところでこのとき、はねた車の運転者はこう言った。
「治療費は当然こちらで全額払いますが、保険を利用しなくてもいいでしょうか?」

 以下、現場検証編に続く。


 


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